僕は星どろぼう

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八束

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SS寄せ集め 2013.09.29(Sun) 

privatterの方でちまちま投稿していたSS三本です。

順番としては、
ロスコキスネタ(本編より2年後くらい)→
アンダルスキスネタ(本編中、シャウエンに向かう道中)→
もが追ハロウィンSS(現代パロ)
です。


<ロスコdeキスネタ>

 ――事の発端は、くだらない口喧嘩だった。

「クラエスって、自分から進んでキスしてくれないわよね」

 肘掛椅子に体を沈め、物理学の本を開いていたユリアナ(推定年齢16歳)は、ふと思い出したようにそんなことを口にした。
 クラエス(推定年齢26歳/属性・永遠の少年)は、その言葉にあやうく整備していた回転式拳銃を取り落としそうになった。落としかけた弾倉をなんとか片手に、唇を尖らせてユリアナを見る。

「誰があなたのような小娘とキスなどしますか」
「挨拶のキスもしてくれないじゃない。ヨクトシアは喜んでしてくれるのに」
「あなたとキスするくらいなら、動物とした方がマシですね。そっちの方が大人しそうですし、なによりあなたの百倍は可愛らしいでしょうし」

 単純に色恋沙汰が苦手というだけだが、それを十も離れた小娘に悟られたくはない。からかうようにそう言えば、無言でユリアナが睨みつけてきた。

「ああそう、それならいいわ。あなたのだーい好きなネコちゃんとちゅっちゅしていればいいじゃない。まあうちはネコ禁止だけど」
「ネコの可愛さの分からないあなたが愚かなんですよ」
「分からないわけじゃないけど、アレルギーなの! もう、ネコと比べれるなんて失礼しちゃうわ」
「そもそも同じ土俵に乗ってすらいないので大丈夫ですよ」

 ぷうと頬を膨らませたユリアナに、ああこれは怒ったな、とクラエスは悟る。しかしここで謝るほどクラエスも素直ではない。

「何よ……。じゃあクラエス、私とヨクトシアだったら!? どっちの方がキスしたい?」
「はあ? 何を言い出すんですか?」
「どっちよ。どっちか答えなさい」

 黒い睫毛にふちどられた両目に見据えられ、クラエスは、う、と言葉を詰まらせた。

「……ヨクトシアですね」
「へえ?」
「あなたとキスするくらいなら、ヨクトシアとキスしたほうが千倍もマシですね!!」

 ――ならばキスしてもらおうじゃない、とユリアナがほくそ笑んだ。


 *

 買い物から戻ってきたヨクトシア(推定年齢21歳/非童貞)が、まず初めに見たのは鬼気迫った様子の(元)上司の顔だった。
 
「ヨクトシア、そこを動かないでくださいね?」

 クラエス仕様に改造済みの回転式拳銃を片手ににじり寄ってくる上司は、ただならぬ気配を放っている。――これは、殺気だ。
 敵国の要人を射殺したときも、彼の姉と死ぬ気の鬼ごっこ(クラエスがヒューのプリンを食べたらしい、当然の報いだ)を繰り広げたときも、これほどに冴え渡った殺気を放ったことはないだろう。――それが今、自分に向けられている。

「……失礼します」

 以前のヨクトシアであったなら、その場で動けなくなっていたことだろう。しかしドヴッジャイラの件を経てつるっと一皮剥けた彼は、即座に逃亡という選択肢を手にした。
 ――逃げるが勝ちだ。
 ヨクトシアは買い物袋を抱えたまま、くるりと踵を返して走り出した。
 上司が何を怒っているのかはまるで見当がつかないが、まあユリアナ絡みだろうなあ、となんとなく推測する。迷宮のように入り組んだカイロの裏路地へと飛び込み、縦横無尽に駆け回る。しかし相手の力量は当然ながら自分よりも上――撒けるはずがない。

「どうしたものか……」

 考えたすえに、ヨクトシアは抱えていた紙袋の中から煮干を取り出した。
 煮干だ。煮干。なぜか買い物リストにいつも入っている。
 ヨクトシアは高速で追いかけてくるクラエスを尻目に、カイロの中でも有名なネコ通りへと向かった。ネコ通り――言うまでもなく、ネコ様が大量繁殖している路地である。

「ほら、餌だぞー」

 ヨクトシアは気のない叫びを上げながら、持っていた煮干を後方――クラエスへと向かって投げつけた。

「なっ……、卑怯ですよ、ヨクトシア!」

 にゃあにゃあと黄色い歓声があがり、大量のネコがクラエスに群がっていく。ネコ好きのクラエスにはたまらない仕打ちだろう――そう思って、なんとか時間を稼いだ……と思ったのが、ヨクトシアに生まれた初めての隙だった。

「待ちなさいっ!」

 しかし、クラエスはそこで立ち止まらなかった。
 大量のネコにまとわりつかれながら、クラエスは自慢の脚力を発揮し、ヨクトシアとの距離を急速に縮めた。がしっと背後から腕を掴まれ、首を絞められる。まったくその細腕からどうしてそんな怪力が出るのか、ヨクトシアにはまるで分からなかった。

「くくくクラエスさん、死にますっ、さすがに死ぬ……っ!」
「逃げるお前が悪いのですよ」
「追っかけてくるクラエスさんが悪いのですよ!」

 ぎゅうぎゅうと締め上げられ、視界が霞んでいく。
 白んだ視界の中で、ユリアナの天使のような微笑が浮かんだ。ああ……ユリアナ、まだそんな顔ができたんだな……最近はめっきり小悪魔むしろ外道の顔しかしなくなったというのに……。 

「ぶっ……はあ、はあっ……」

 そこで急に開放され、ヨクトシアは大量に入り込んできた酸素にむせた。
 肩で息をしていると、クラエスがゆらりと正面に立った。透けるようなプラチナブロンドが風に靡き、長い睫毛が間近にまで迫り――間近に?

「クラエスさんいったい何を、うわ、ぎゃ、ぎゃっ……」

 ――そして、ヨクトシアの視界は暗転した。

 *

「もう一回ね」

 地学の本を片手に、ユリアナは溜め息交じりにそう言った。

「……今、なんと?」
「だから、もう一回。だって、私見てないもの。そのキスをしたっていう現場をね。だからもう一回、ここでいいからしなさい」
「……くそっ」

 思わず拳を握ったクラエスに、ユリアナは冷ややかな視線を注いだ。
 肘掛にもたれかかり、胡乱げにクラエスを見やる。それから、もう一度聞くけど、と念を押すように問いかけた。

「そんなに私とキスをするのが嫌なの?」

 クラエスの服の襟を引っ張り、ユリアナは彼の顔を見上げた。床で伸びているヨクトシアを一瞥し、かわいそうに、と再び溜め息をつく。

「それは……」

 多少ばつが悪そうに目をそらした彼の服の襟を掴み、ユリアナは僅かに笑った。
 唇に当たる、やわらかな感触。クラエスは目を瞠り、そしてしてやったりとばかりに口元を歪めたユリアナを見下ろした。

「どう? これでも嫌?」
「―――ッ、嫌です。嫌に決まっているじゃないですか」

 頬を薄っすらと染めて目を逸らしたクラエスに、ユリアナは声を立てて笑った。
  


<アンダルスdeキスネタ>

 故郷の夢を見た気がした。
 わだかまる暑気の中で目を覚ましたとき、フリアの胸には漠然とした郷愁がうずまくだけで、それが一体どんなものだったのかは思い出せなかったけれども――きっと、兄か母の夢だったのだろう。今でも目を閉じれば、柱に飛んだ油の汚れまで鮮明に思い浮かべることができた。
 羊毛を織った簡易テントの扉から、そっと外の様子を窺い見る。砂漠の朝は早いとは言えども、それにしてもまだ夜も深い時間帯のようだった。群青色の空には無数の星がまたたき、月が蜜色の光をとろりと垂らしている。外で番をしているはずのハヤールの姿はなく、偵察にでも行ってしまったのだろうか。

「眠れないな……」

 薄手の毛布の下でぐっと両足を伸ばし、フリアはすっかり覚醒してしまった目でテントの中を見回した。
 隅ではアンヘルが毛布にくるまっていて、穏やかな寝息を立てている。その平和そうな寝顔を横目に、フリアは小さな溜息をこぼした。――故郷の夢を見たときは決まって、中々眠りにつくことができない。いくら目を瞑って眠りの淵に沈もうとしても、頭は暗闇の中でどんどん嫌な記憶ばかりをたぐり寄せた。落日に照らされる村、あちこちで上がる火の手、そして最後の銃声。
 奴隷として運ばれてきた当初は、それこそ悪夢で何度も飛び起き、過呼吸に苛まれたものだ。最近ではようやく落ち着きはじめたが、それでもどきどきと動悸を打つ胸だけは変わらない。フリアは起こした上体を屈め、じっとその悪夢が過ぎ去るのを待った。

「……フリア?」

 そんなとき――ふと耳朶を打ったアンヘルの声に、フリアはびくりと肩を揺らした。

「アンヘル? 起きてたの?」
「なんとなく目が覚めて。フリアは眠れないのか? 明日も早いんだ、寝て体力を回復しておかないと……」

 フリアはとっさに虚勢を顔に貼りつけたが、彼はそんな彼女の様子を感じ取ったのかもしれない。
 手元のランプに火を起こすと、フリアの横へと並ぶ。赤茶けた色合いを帯びたテントの中で、アンヘルの金色の瞳がフリアをまっすぐに捉えた。

「顔色が悪いな。嫌な夢でも見たのか」
「……覚えてないんだけどね。でも、いろんなことを思い出しちゃって」

 そう言って俯けば、アンヘルの静かな眼差しを感じる。ふいに伸ばされた彼の長い指先が、フリアの髪に触れる。
 額の髪をそっと掻き分けた指先に視線を向ければ、思ったよりも近いところにアンヘルの顔があった。びっくりして硬直しているうちに、柔らかいものがおでこに押し当てられる。すぐに離れていったそれが彼の唇だと気付くのに、フリアは数秒もの時間を要した。

「なななななっ、な、なに……!?」
「私が小さい頃は、母上がよくこうしてくれたんだ。安心するかと思って」
「逆にびっくりしたよ……!」

 濃やかな睫毛が伏せられ、アンヘルは柔らかにほほ笑んだ。
 闇の中に浮かび上がる彼の骨格に、自分とはほど遠い異性を感じる。フリアは彼の唇の触れた額がじんわりとした熱を帯びるのを感じ――羞恥にぶんぶんと勢いよく顔を左右に振った。

「はは、元気そうだな」

 そう言っておかしそうに笑いを堪えたアンヘルを、フリアは居心地悪く見つめた。
 どきどきと拍動を打つ左胸を押さえる。その動悸が先ほどまでとはすっかり別の意味合いを帯びていたことに、フリアはまだ気がついていなかった。


<もが追ハロウィン>


「Trick or treat!」

 玄関の扉を開くと同時に飛び込んだのは、揚々としたアスールの声だった。
 チェインはドアを開いた格好のままでしばし静止し、冬の気配を帯びかけた風に吹かれる少年少女を凝視する。それからああ今年も来たのか、とさりげなさを装って靴箱の上に置いていた箱を手に取った。

「当然じゃん! タダでお菓子がもらえる上に悪戯もできるなんて、こんな良い日があって利用しない手はないよね」
「アスール、お菓子をもらったらそこで終わりですよ」
「細かいことは気にしない性質だから、僕」

 そう言ってふんぞり返ったアスールは黒い裾長のマント姿で、ちいさな口元からは出来合い牙が覗いている。
 その後ろに立つアリシアは、背中からちょこんと小さな悪魔の羽根を生やしていた。十四歳になってもアスールの遊びに付き合わされているのが恥ずかしいのか――どこか所在なさげな表情で、上目遣いにチェインを見上げる。

「悪戯されるのは勘弁だからな。これでご容赦願おうか」
「わーい」
「ありがとうございます……」

 チェインの差し出したキャンディーの詰め合わせを、アスールは喜色満面の笑みで受け取った。いそいそと持参していた袋の中に突っ込み、今日は豊作だなあ、なんて茶目っ気たっぷりの顔で言う。アリシアもチェインからお菓子を渡されると、大切そうに胸の前でぎゅっと抱きしめた。

「よーし、次はユメかな~。今年は何くれるかな」
「去年はゴデ○バのチョコでしたよね」
「あいつは嫌味ったらしいけど、なんだかんだ金持ちだもんなあ~。ああいうのコウトウユウミンって言うって知ってた?」
「ええっと……。ユメさんは大学院生ですよ、アスール」

 なんやかんやと楽しげに会話を進める二人を眺めていると、ふいにアリシアがちいさなくしゃみをした。

「馬鹿は風邪引かないって言うのに……。馬鹿じゃなかったんだね、君って」
「しょうがないじゃないですか、この格好寒いんですよ」

 確かにマントに包まれているアスールに対し、アリシアはひどく寒々しい格好だった。
 小悪魔がコンセプトらしいサテン生地の衣装はフリルもレースもふんだんにあしらわれているが、肩も背中もほとんどむき出しで、スカート丈も妙に短い。去年はかわいらしい天使だったはずだが、どうして今年はこうなったのか――微妙に目のやり場に困っていたチェインは、にこやかにアリシアに話しかけた。

「さすがに風邪を引きそうだな。俺の上着でいいなら貸すが……」
「えっ、いいんですか……?」

 申し訳なさそうに首を傾げたアリシアに頷くと、その横でアスールがぴょんと飛び跳ねた。

「じゃあ僕は先にユメのところ行ってようかな。馬鹿アリシアは風邪引かないうちに暖まった方がいいと思うし」

 返答も待たずさっさと行ってしまったアスールを、アリシアは呆れたように眺めた。風に晒しておくのも可哀想だと思ったチェインは、その肩を引き寄せてまずは部屋の中に入れようとする。
 大学生が中学生を部屋に連れ込むというのも中々に問題な気がしたが、元からアスールと入り浸っているのだ。さほどの支障はないだろうと判断すると、アリシアもとくに抵抗なく室内に足を踏み入れた。

「大分冷えているな。待ってろ、上着取ってくるから」
「すみません、気を遣わせてしまって……」
「気にしなくていい。風邪を引かれる方が困るからな」

 椅子にかけてあった薄手のモッズコートを差し出すと、アリシアは嬉しそうにそれを受け取った。
 台所に行くと甘党のアスールのために常備されているミルクココアの粉があったので、彼女用のマグカップに淹れてやり、チェインは居間へと引き返した。小さなソファの上には、明らかに袖の余ったコートにもこもこと包まれたアリシアが座っている。
 アリシアはチェインからマグカップを受け取ると、ほっこりと表情を緩めた。いそいそとココアをすする彼女の横に腰を降ろすと、ふわりと甘い菓子の匂いが鼻腔をくすぐる。

「今日はどこを回ってきたんだ?」
「ええっと……。ルバルカバおじさんとか、セラフィナのお家とかですかね。アスールに連れて行かれるままに行きました」
「ルバルカバか……。あれにはあまり近寄らない方がいいと思うが」
「そうですか? でもお菓子ちゃんとくれましたよ」

 そう言ってアリシアが懐から取り出したのは、いかにもルバルカバらしい――薔薇の形になったチョコレートだった。丁寧に透明な袋でラッピングされ、淡桃色のリボンが添えられている。
 思わず微妙な気分になり、チェインは苦渋に顔をしかめた。ルバルカバは近所に住む神学の教授だが、いかんせん年端のいかない少女が大好きなのだ――いつかその毒牙にかかってしまうのではないかと内心冷や冷やしているのだが、アリシアにはまったく伝わってないらしい。

「まあ……あんまり迂闊に近づくなよ。変なことされそうになったらすぐ逃げろ」
「……よくわからないけど、チェインさんがそう言うのならそうします」

 湯気を立てるマグカップを手の中に収めたまま、アリシアは生真面目な顔つきで頷いた。
 そんな彼女があまりにも可愛らしかったので、チェインはくしゃりと彼女の頭を撫でる。するとアリシアはびっくりして肩を揺らし、思わずマグカップを落としかけた。その様子にくすくすと笑いをこぼせば、じとりと浅緑色の目に睨まれた。

「はは、すまない」
「別にいいですけど……。こぼしちゃったらどうするんですか」

 そう言ってマグカップをテーブルの上に置くと、ふと居住まいを正し、アリシアはチェインを見上げた。

「チェインさん」
「何だ?」
「と……とりっくおあ、とりーと」

 ふいに小声で囁かれた言葉に、チェインは目を細める。

「残念ながら菓子は先ほどので売り切れだが……」
「じゃ、じゃあ悪戯します!」

 なにやら緊張した様子でアリシアはソファーから腰を浮かせた。コートがずり落ち、真っ白い肩が視線に留まる。まるでその隙を計らったように、柔らかなものがチェインの頬に押し当てられた。

「アリシア、」
「きょ、今日の私は小悪魔なので! だからですから! だ、だから……っ」

 真っ赤になって熱説する彼女は、呆気に取られるチェインを見て、今度は脱兎のごとく逃げ出した。とっさにその腕を掴もうとするが、意外に俊足なアリシアの背は既に玄関近くにまで遠ざかってしまっている。

「そ、それじゃあ! 上着とココアありがとうございました!」

 律儀に礼を言いながら去るアリシアを茫然と見つめる。
 それからふと思い出したように、チェインは彼女の唇がふれた頬に指先を伸ばした。

「……さすがに十四歳は犯罪だよな」

 ルバルカバじゃあるまいし、と思いつつも、チェインの口元は緩んでいた。
 左の頬は、まるで炎に触れたように熱を持っている。
 


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