僕は星どろぼう

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八束

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【もが追】後日談 冒頭 2013.08.03(Sat) 

4周年に合わせて出せたらいいな、と思っているもが追後日談(完結編?)の冒頭です。
チラ見せチラ見せ~( ´ ▽ ` )ノ



 揺らめく木々のざわめきが、頭の上でずっと鳴り響いていた。
 柔らかに繁茂した草を踏みしめると、途方のない年月を経た、太い幹の翳に佇む少女のすがたが見えた。潤んだ浅緑色のひとみは、しかし涙に濡れてはいない。意外にも気丈ぶる顔が向けられて、アスールは古木の数歩手前で足を止めた。

「チェインがどこにもいなくて……」

 まだらに落ちる木洩れ日を首筋に浴び、少女はぐっと唇を噛みしめた。
 服の裾をぎゅっと掴んだしろい手は小刻みに震え、そのさまは今にも泣き出しそうに見える。しかし目の前の少女の頑固な面を知っているアスールは、小さく溜め息をついて、鬱蒼としげる森を見わたした。

「あいつ隠れるのうまいもんね。僕も見あたらないや、あーあ」
「どこに行っちゃったんでしょう……」
「うーん……。あいつのことだから、君が泣き出したら、すぐに出てくると思うけど」

 揶揄するように言えば、少女はゆるゆると首を左右に振った。その拍子に、糖蜜色の髪がふわりと綿毛のようにふくらむ。すべらかな頬はそれでも乾いたままで、涙をこらえるように少女はきつく瞼を閉めた。

「そんなみっともないこと、できません。それよりアスールも一緒に探しましょう。チェイン、本当にどこに隠れちゃったんだろう……」
「そのうち出てくると思うけどね。あーあ、いい加減あいつの鼻をあかしてやりたいもんだなあ」

 不満そうにくちびるを尖らせ、アスールはようやく少女に歩み寄った。
 ぶっきらぼうに手を差し出すと、少女はきょとんとした顔つきで彼を見上げた。――この頃はまだ、自分のほうが背が高かった。

「前みたいに迷子になったらやだし。手、つなご。嫌ならいいけど」
「別に……いやじゃないですけど」

 おずおずと差し出された手を強引ににぎり、アスールは少女を引っ張って歩き出した。
 深い森は静かにざわめき、二人を奥へ奥へといざなっているように見えた。不安に駆られ、ふたたび強く握りしめた手は柔らかく、かすかに汗がにじんでいる。ぴったりとアスールに寄り添った少女は、どこに行っちゃったんだろう、とやはり今にも泣き出しそうな声で不在の彼を呼んだ。
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