僕は星どろぼう

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八束

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もが追SS 2013.03.18(Mon) 

ロスコに引き続きもが追SSです。
SS中には含まれませんが、作品の性質上15歳未満の方の閲覧はお控えください。

よろしければ続きからどうぞ!




「はあー? 打ち合いの相手やれって?」

麗らかな春の昼下がり、走り込みを終えたばかりのアスールは不満そうな声を上げた。
水場で休憩を取ろうとした矢先の、チェインからの提案だった。同じく走り込みをしていたチェインは、汗を拭いながら頷きを返す。珍しく三人揃っての非番だったので、傍にはアリシアもいた。チェインの背後でしょぼくれた顔をする彼女を一瞥し、アスールは唇を尖らせる。

「アリシアとやればいいじゃん。いつもみたいにさー」
「たまには他の相手とやらないと癖がつきそうだからな」
「そんなこと言って、アリシア相手だとついつい手加減しちゃうんじゃないの? けっ」

チェインが何とも微妙な顔をして、アリシアが更に落胆するのを見て、アスールは妙な罪悪感に駆られた。――何で僕がこんな気持ちにならなくちゃいけないのさ、と内心毒づく。チェインにはアリシアの顔が見えていない。
仕方なしに立ち上がると、アスールは首筋の汗を拭い、チェインの横に立った。行くよ、と声だけかけて、一人先に訓練場へと歩き出す。アリシアには悪いが、チェインの相手をするしかなさそうだった。

  ◇  ◇  ◇

アスールは別に打ち合いが嫌いなわけじゃない。
どちらかと言えば後方でちょこまかと策を練るのが好きだが、聖騎士として表立って戦うことが多いために、別に剣が不得意な訳ではない。接近戦だって得意だ――それなのに今回嫌がったのは、チェイン相手だと勝てる見込みがほとんど無いからだった。基本負け戦はしたくない主義なのだ。
訓練場の円盤の上に佇み、アスールはチェインと向かい合っていた。すっと模擬刀を構えるチェインの姿は憎らしいほどに様になっている。そんな彼を視界に、アスールはその質量に慣れるように何度か模擬刀の握り直した。ほんとアリシアもよくこんなのの相手をするよなあ、と思いつつ、合図を取るアリシアを一瞥する。

「始め」

二人の準備が整ったことを察し、アリシアが合図を出す。
それと同時にアスールは駆け出していた。チェインとの体格差、身長差を考えるに、このまま距離を保っておくのは得策ではない。懐にさえ入ってしまえばいくらか勝機が見込める。
チェインもそれが分かっているのか、牽制するように模擬刀を左右に振った。まともに受けた場合、手首の負担は尋常じゃない。なるべく威力を押し殺すようにそれらを刃身で流すが、何度か激しい剣戟にまで至ってしまう。

「ああもう、まどろっこしいなあ!」

剣を交える度に合うチェインの眼は、恐ろしいほどに静かだ。
チェインは動く範囲を最小限に留めつつ、アスールとの剣の応酬を交わしていた。しかし中々懐に踏み込むことができず苛立つアスールを察したのか、ふいに一歩大きく前に踏み出す。その際に前傾姿勢で大きく繰り出された剣筋を、アスールは如才無く見抜いた。
必要以上に大きく振るわれた剣筋を見極め、身を屈めてそこを掻い潜る。アスールはチェインのがら空きの懐へと踏み込むことを達成し、見えてきた勝機に内心沸き立つ。しかし一瞬、チェインの僅かな笑みが視界を掠めた。

「っ、」

後頭部に強い衝撃を受け、アスールはその場で膝をつく。
大きく振った刃の反動を利用し、模擬刀の柄底で強打されたのだと気付いた頃には、既に勝敗は決していた。的確に延髄を殴打されたアスールは、そのままあっけなく意識を落とした。


  ◇  ◇  ◇


「あ、アスール。目が覚めましたか?」

目が覚めた時、なぜかアリシアの顔が至近距離にあった。
アスールは目を瞬き、彼女の長い睫毛に縁取られた浅緑色の瞳を見つめた。大事に至らなくてよかったですね、とのほほんと言う彼女の声も耳に入らない。
何だろう、この頭を支える柔らかかつ適度な弾力のある物体は――目が覚めたばかりで、ろくに動かない頭をアスールは必死に働かせ、それからようやくその正体に思い当たった。

「……アリシアのばか。あほ。膝硬いんだよ」
「でもアスール、顔真っ赤ですよ」

チェインとの打ち合いの末に意識を失い、そして今、自分はどうやらアリシアに膝枕されているらしい――。冷静に現状を分析したところで、アスールの顔は真っ赤に染まっていた。
恋愛感情など一切抱こうとも思わない相手なものの、異性に膝枕されたとなれば意識しない訳にはいかない。アスールは必死にアリシアを睨んでいたが、そこで不意に他人の足音が耳に入った。

「ああ、アスール。目が覚めたのか。すまない、ついやり過ぎてしまった」
「チェインさん!」

アスールへの呼びかけに真っ先に反応したのはアリシアだった。
彼女が慌てて立ち上がろうとしたものだから、体重を彼女に預けていたアスールはあっさりその膝から崩れ落ちた。訓練場の硬い床にしたたかに頭を打ちつけ、先程強打された痛みと相まって激痛が走る。

「いった……ちょっとアリシア! 急に何するんだよ!」
「え、あ……ごめんなさい、アスール。つい」
「ついって! ついって!」

頭を押さえながら涙目で抗議すれば、アリシアは殊勝な態度で謝った。それにとりあえずは怒りの矛を収める。

「チェインもチェインだよ。ここぞとばかりにしこたま打ちつけてきやがって」
「すまないな。つい」

悪びれもなく言うチェインに、アスールは唇を尖らせた。
アリシアとチェイン、二人揃って僕をいじめてくるんだから――もう二度と、この二人相手に鍛錬なんてするものか。そう心の中で誓った。
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