僕は星どろぼう

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八束

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もが追SS 2013.02.28(Thu) 

昨日のことになりますが、もが追の断章を更新しました。ちょっとした舞台裏。

続きからは、本編の暗さに耐えかね書きたくなったもが追のSSです。
本編以前のお話。アリシアとアスールは10歳くらいで、二人がまだちまい時のお話です。



ヴィアラクテアの冬はその長さと豪雪で知られている。

来る日も来る日も降り注ぐ雪に、教団の景色も青白いばかりだ。
アリシアはその日の雪かきを終えた手に息を吐きかけると、寝台の上で縮こまった。窓のむこうは太陽の残光に照らされて、凍った雪の表面がちらちらと輝いている。このまま夜が来れば、気温はもっと下がるだろう。そうして憂鬱な気分にひたっていると、ふいに扉の向こうから甲高い声がかかった。

「アリシアー、いる?」

戸を開けてひょっこりと顔を覗かせたのはアスールだ。
彼が腕に枕を抱えているのを見て、アリシアは顔をこわばらせた。――彼がこうして夕方枕を抱えてやってくるのは、雪かきに並ぶ冬の日常の一つだ。宿舎には暖房器具がないので、寒い夜を乗り切るために二人で身を寄せ合って寝るのだ。そのことは別にかまわないのだけれども、とアリシアは無言でアスールを見つめる。

「何さ、しぶーい顔して。夜になる前に寝ちゃおうよ」
「……いやです」
「はぁ、何で!?」

寝台に両腕をついたアスールが、驚いたように声を張り上げた。

「だってアスール、寝相がわるいじゃないですか。朝起きたら、わたしいつもベッドから落ちているんですよ? アスールに蹴られて。寒いし、ひどいですよ」
「蹴り落とされる君が悪いんだって。よわっちいなあ。……そんな膨れっつらするなら、もういいよ。一人で寝たら? 僕はチェインのところに行くし」

善は急げとばかりに部屋を出ていこうとしたアスールを、慌ててアリシアは引き留めた。
服の首根っこを掴まれた彼は、訝しげにアリシアを振り返る。――とっさに引き留めたものの、アリシアは何と言ったらいいかわからず唇を噛んだ。

「え、えっと。そ、それって、チェインと一緒に寝るってことでしょう? それは駄目です」
「何で? 別に何の問題もないじゃん」
「駄目ったら駄目なんです!」

顔を赤らめて叫んだアリシアに、アスールは最初きょとんとした顔をした。それからふいに、合点がいったというようににやにやと笑みを浮かべ始める。

「ははーん、わかった。アリシア、うらやましいんでしょう? 僕がチェインと寝るの」
「べ、べつに、そういうわけじゃ……っ」
「アリシアってわかりやすいんだよ。そういうことなら、三人で寝ればいいじゃん」

満面の笑みでそう提案したアスールに、アリシアはさらに顔を紅潮させた。
わたわたと慌てて拒むが、持ち前の強引さを発揮したアスールを前になす術はなかった。


 ◇ ◇ ◇


「一緒に寝る? まあ、それは別にいいが……」


アスールの背中に隠れながら、アリシアはチェインの表情を窺った。
自分も少しは背が伸びたはずなのに、相変わらず見上げるほどに大きい。チェインの静かな黒い眼差しを向けられて、アリシアはびくっとして再びアスールの後ろに引っこんだ。不思議そうな目線を注がれても、恥ずかしくて顔を上げることができない。

「ほんと!? じゃあさっさと寝ようよ。僕らもう就寝時間だからさ~」
「早くないか? いや、子どもだからそんなものか……」
「冬場は冷えこむ前に寝ちゃうのが一番だからね。ほらほら」

チェインを寝台のある方向に押しやりながら、アスールがからかうような笑みを向けてくる。
そのことに気がつく余裕もなく、アリシアはきょろきょろとチェインの部屋を見回した。自分とはまったく異なる生活感を滲ませる室内。なんとなく気恥ずかしい気持ちになっていると、ふいに背中をどんと押された。

「わっ」

そのまま目の前にあった寝台に体ごと倒れこむ。
誰かの腕に抱きとめられたかと思うと、今度は押しこむようにアスールがベッドの中に入ってきた。
小さいアリシアとアスールが二人で使うならまだしも、すっかり大人の体格のチェインがいるものだから、寝台の中は非常に狭い。自然とぎゅう詰めになってしまい、アリシアは圧迫感に息苦しさをつのらせた。

「ちょっとアリシア、もっとそっち行ってよ。狭い」
「そ、そんなこと言われても……」
「やっぱり無理がないか? アリシアが潰されかねないぞ」

思った以上に近い距離で囁かれる声に、アリシアは目を瞑った。チェインに背を向けたまま、どうやっても振り返ることはできそうにない。
無理のない位置を探そうとごそごそと動いていると、ふいに後ろから体を引き寄せられた。自分を抱き寄せたのがチェインだと気がつくよりも早く、アリシアの小さな体は彼の腕の中にすっぽりと収まっていた。予想していなかった状況と密着する体温に、ようやく赤みの引いた顔はみるみる紅潮してゆく。

「これで潰されないだろう」
「えっ、えっ、そ、そうですね……」
「アリシアよかったじゃん。その格好なら僕に蹴落とされないじゃん!」

笑いながらアスールがすり寄ってきたせいで、チェインの腕からは抜け出せそうもない。
恥ずかしさやらちょっと嬉しいやらで固まった顔を見られたくない一心で、アリシアはシーツに顔を埋めた。背中に当たるチェインの少し低い体温や、耳の傍で聞こえる息遣いが、アスールと寝る時とはまったく違う感覚をもたらしてくる。胸の鼓動がいつもより速度を上げて、手の中には汗が溜まってきた。
どうしてチェインといるとこんなに浮かれてしまうのか、アリシアにはわからなかった。どきどきとうるさい心臓の音が聞こえないかどうか、そればかり気になってしまう。
すぐにアスールの寝息が聞こえてきて、アリシアは自分はこのまま緊張で眠れないのではないかと不安になった。しかしそれは杞憂で、あっという間に眠気の波にさらわれ、アリシアはチェインの腕の中で冬の寒さも忘れて寝入った。

夢の中にチェインとアスールが出てきたのは、こっそりと胸の中に閉まっておくとして――翌朝目が覚めたら、いつも通りアスールに蹴落とされていたのに、アリシアは心底がっかりした。











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